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<連載>  ダブル・フィクションとしての天皇 (第47回)


「特務集団」 と 「特務機関」


 まず、翻訳用語の問題ですが、これまでこの訳読で、天皇裕仁を頂点に、皇室メンバーや抜きん出た若手将校たちを組織した秘密の組織を、 「特務集団」 と訳してきています (訳読の早い段階では、別の訳語もあります)。
 そこに今回、 「特務機関」 と訳すべき組織が登場し、読者には、ちょっと紛らわしい用語となっています。じつは、この言葉の登場は、最初は第9章で、その際は 「特機関」 と訳しました。それは、もうひとつの 「特集団」 との混同をなるべく避けたいとしたためでした。
 しかし、今回、その組織がふたたび登場し、しかも、その英語訳 「Special Service Organ」 の日本語原語が 「特務機関」 と正式にも呼ばれていることもあって、この訳読でも、その正式名称を使うこととしました。それに伴い、9章の訳も、 「特務」 に修正しました。なお、9章には、その機関についての著者による注記もあります。
 ともあれ、今後、この二種の 「特務」 組織は、裏に表に、縦横に暗躍してゆくはずで、混同しがちながら、注意して読み進めてください。

 ところで、前回に私は、 《日本のいわゆる 「誰も責任を取らない」 体制は、自部族/民族の永久の存続を準備する、日本人の一種の歴史的 “知恵” であるのではないか》 と書き、日本のある種の歴史的・政治文化的 “傾向” に注目しました。
 そういう、君主の姿を見せぬ支配の形態は、古代の小規模、単純な民族構成の時代ならいざ知らず、人口が一億にもなろうとする国家にいたっては、当然に、それなりの複雑な利害関係をそれぞれに代表する、立憲君主制や民主的代議制のシステムが必須となってきます。
 その多義的構成を一義的権力執行に持ってゆこうしたのが戦前、戦中の日本であり、その矛盾を解消するために編み出された権力執行機関、ことにその闇の部分が、上記の、 「特務集団」 や 「特務機関」 でありました。すなわちその共通する 「特務」 たるものは、闇に暗躍するということであり、一義的権力執行は、それ抜きにはありえなかったということです。
 また、今回で、この訳読はその第12章を終え、次回からは、満州において口火が切られた日本の拡張・侵略政策の、いよいよの世界的 “デビュー” の章へと入ってゆきます。

 それでは以下が、第12章最後の部分の 「訳読」 です。

 (2011年7月7日)


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