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<連載>  ダブル・フィクションとしての天皇 (第64回)


北進派=皇道派、南進派=統制派


 もう、本訳読に幾度も用いてきているように、当時の日本の国家戦略をめぐって、 「北進派」 と 「南進派」 という対立があります。
 ただ、日本史上の用語でいうと、この二つの言葉は、どうもあまり馴染みがありません。説明上の一般名詞としての使用はありますが、特定のグループを指した固有名詞としての使用例ではありません。(国家政策論としての 「北進論」 と 「南進論」 はあったようです)。どうやら、この対語は、著者のバーガミニの造語で、外国人に解りやすくするため、あえてこの “工夫” を用いたものと思われます。
 根付いている日本語上の表現では、ここにいう 「北進派」 と 「南進派」 に相当するものは、それぞれ、 「皇道派」 と 「統制派」 です。
 私見ですが、この 「皇道派」 と 「統制派」 との言い方には、どこか解りにくいものがあり、バーガミニの造語のお陰で、そういう対立が根本にあってのこの両派だったのかと、納得するものがありました。
 日本人自身の場合、両派の起こりの経緯を体験してきているがゆえ、厳密に定義し過ぎて、かえって混乱しがちなところがあります。私の体験はその一例でした。
 私の場合、たとえば、 「皇道派」 という語感から、こちらの方がむしろ “天皇派” であるかに受け取れたのですが、事実は逆でした。そういう私のとちりでした。
 そういう次第で、 「北進派」 と 「南進派」 をそれぞれ 「皇道派」 と 「統制派」 と置き換えた方がより正確な翻訳となる箇所も少なくなさそうですが、本訳読では、解りやすさを優先させて、バーガミニ流の 「北進派」 と 「南進派」 でゆくこととします。
 ただ、今後、あえて日本式の表現が必要な場合も出てくるかもしれません。その際は、併記するなどして、本来の名前を尊重するつもりです。
 ではそういう戦後官僚制度の土台作りであった時代の一断面、第17章 (その3) へとご案内いたしましょう。

 (2012年3月4日)


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