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<連載>  ダブル・フィクションとしての天皇 (第51回)


青き頑なさ


 今回の 「訳読」 のハイライトは、この章が 「ドル買い」 と題されているように、日本が手段を選ばず、戦争準備に余念がないあり様で、このハイライトをもって、この第13章は閉幕となります。
 ただその手段を選ばぬ余りな血眼さは、今日の日本のどこかの国への主体性を欠く属国ぶりと比べてみると、ある種の切なさをも抱かされる青き頑なさです。ことにそれが、ドル買いという、金融手段を駆使してまで軍資金を作ろうとしている奮闘振りを見れば、今日の、その米国のなりふり構わぬ金融武器の乱用と比べてみても、さほど見劣りしない覇気の発揮ぶりともうつります。

 そういう当時、あえて言えば、その時代にただ一人、正気と現実的な国際感覚を備えた藤原貴族の末裔、西園寺は、日本が選択した金本位制からの離脱のニュースを聞いてこう言います。

  「これではまるで、開店前から破産宣告する銀行じゃないか」
 本文の文脈からでは、それが意味することが、ちょっとつかみづらいところがあります。
 それは、西園寺が近い住友銀行の好敵、三井銀行のその露骨なやり口をそうたとえたのか、それとも、そうして戦争へと向かう日本をの危なっかしさをそうたとえたのか。読者はどう解釈されますか?

 そういう意味では、もはやすっかりと、青くも、頑なでもなかった西園寺の円熟さは、いかにも貴重な重しであったかに見えます。
 それでは、その訳読の最新部へとお進みください。

 (2011年9月7日)

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